大阪市における人権相談事業から考える

 大阪市同和問題に関する有識者会議に、大阪市人権啓発・相談センターの資料が出されている。相談実績などは大阪市のHPで見ることができる。
 相談実績を見ると
 *平成27年度(26年4月から27年1月の合計)
  課題別件数7888件の内 同和問題は、20件(0,3%)
 *平成26年度
  課題別件数9927件の内 同和問題は、69件(0,7%)
 *平成25年度
  課題別件数9995件の内 同和問題は、80件(0,8%)
 というように、減少傾向である。
相談事例も有識者会議で事例報告がされているが、気になる事例として、ルーツ探しの相談が報告されていたとのことだ。きわめて大雑把に言うと、「私は**という所で生まれ育ったが、同和地区出身者という証明をしてくれ」という相談である。
 このような相談が持ち込まれたことに相談担当者が驚いたらしいが、それだけ同和問題が解決しつつあるということだ。
 ちなみに27年度の相談割合を見ると、
 1,障がい者 41,3%(虐待、差別、自立支援・・)
 2,生活    9,7%(貧困、生活保護、自立支援・・)
 3,近隣    7,0%(騒音、ペット、いじめ・・)
 4,家族    6,1%(離婚、自立支援、遺産相続・・)
 5,労働    4,9%(不当労働、パワハラ、労働環境・・)
 6,医療    3,3%(誤診、医療費・・)
 7,女性    3,1%(DV、セクハラ・・)
 8,高齢者   2,4%(虐待、介護、認知症・・)
 9,子ども   1,4%(虐待、いじめ・・)
 10,外国人  0,3%(取り扱い、自立支援・・)
 11,同和   0,3%(発言、落書き・・)
 12,その他 34,9%(サラ金、ホームレス、犯罪被害、ネット被害、行政への苦情・・)
と言う実態である。この実態からも、同和問題が解決しつつあるということが分かる。

旧同和対策事業対象地域の課題について

ー実態把握の結果及び専門委員の意見を踏まえてー
大阪府府民文化部人権局作成資料から考える
             

 H22年国勢調査を活用した第1次報告は平成26年に、第2次報告は平成27年に同和問題解決推進審議会で報告されている。さらに専門委員の意見が加えられて、さらに課題が明らかにされている。
 その中で、キーポイントとなるべき部分を考えていきたい。

(1)対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにできない。

 対象地域(79411人)によっては、ほぼ100%が公営住宅と言うところから、ほぼ100%が一戸建て住宅と言うところまである。一括りにできるわけがないというわけだ。
 具体的には、対象地域を9種類の地域類型に分けている。
1,第1種・第2種低層住居専用地域(一戸建ての地域 207人)
2,第1種・第2種中高層専用地域(団地の地域 20690人))
3,第1種・第2種住居地域(団地と一戸建ての地域 33935人)
4,準住居地域(スーパー、倉庫、住宅の地域 232人)
5,近隣商業地域(住宅地に隣接した商店街 1557人)
6,商業地域(繁華街 7563人)
7,準工業地域(あらゆる種類が混在 12194人)
8,工業地域(商店、店舗も存在する工業地域 1552人)
9,市街化調整区域(1481人)
*教育の課題では
 大学・大学院卒業者比率を比べてみると
近隣商業地域(男21,6% 女9,0%)
商業地域(男22,9% 女8.9%)
第1種・第2種中高層専用地域(男14,2% 女5,6%)
第1種・第2種住居地域(男11,2% 女4,4%) というようなちがいがある。
*雇用の課題では
 非正規雇用比率を比べてみると
市街化調整区域(男14,6% 女47,4%)
工業地域(男15,5% 女48,2%)
第1種・第2種中高層専用地域(男23,5% 女56,2%)
第1種・第2種住居地域(男19,6% 女54,3%) というようなちがいがある。
 いずれにしても、団地がある地域では、教育や雇用に課題が多くあるというわけだ。
*基準該当地区とは何か
 対象地域と非対象地域の課題を比較検討するために、以下の6つの指標をもとに、3つ以上の指標が該当する地域を選び出して基準該当地区とよんで比較している(415453人)。
 ちなみに、対象地域で3つ以上の指標が該当するのは、約39000人である。その約10倍もの地域がいろいろ課題が集中している地域(基準該当地域)というわけだ。
 いろいろな課題の6つの指標とは、
1,高齢者単身世帯比率(65歳以上で一人暮らし)
2、母子世帯比率(母親と20歳未満の子)
3、大学・大学院、短大、高専修了者比率
4、義務教育のみ修了者比率
5、完全失業率
6、非正規労働者比率
 対象地域の平均値をもとに、3以外は平均値をうわまった地域を課題のある地域としている。平均値が普通の生活という意味ではないが、一つの目安になるのは確かである。
*対象地域を6つの指標に当てはめると
指標該当なしの地域 19%
指標1つ該当の地域 21%
指標2つ該当の地域 10,6%
指標3つ該当の地域 11,3%
指標4つ該当の地域 9,7%
指標5つ該当の地域 18,1%
指標6つ該当の地域 10,2%
 という結果になっている。

(2)対象地域と同様の課題の集中が、対象地域以外にも見られる。
 高齢者単身世帯比率が高い、母子世帯比率が高い、高等教育修了者比率が低い、義務教育のみ終了者比率が高い、完全失業率が高い、非正規労働者率が高い、という課題をかかえた地域は、上記指標3つ以上対象地域の平均値を上回っている所だとすると415453人いるという結果になる。
 生活実態面で、約41万人が課題が集中している地域に住んでいるという結果になるわけだ。
 H22年国勢調査によれば、住宅所有形態別世帯構成比を見れば、それはどこかということも明らかになっている。
 対象地域(39333世帯)のうち、40.7%が公営の借家であり、基準該当地域(199009世帯)のうち、45,5%が公営の借家である。
 ちなみに大阪府全域(3823279世帯)のうち、6,3%が公営の借家である。
 公営の借家とは、府営住宅、市営住宅、改良住宅などの公営住宅のことであり、公営住宅が多く整備されている所は、生活実態面で課題が集中しているということだ。

(3)対象地域で見られる課題は、必ずもすべてが部落差別の結果と捉えることはできない。
*対象地域の人口の流動化
 H12年調査 人口95468人
(抽出調査7805人回答、47,1%が出生時から居住と回答)
 H22年調査 人口79411人
   出生時から居住  8,6%
   10年未満の居住32,0%
 ちなみに大阪府全域では、
   出生時から居住  8,8%
   10年未満の居住38,3%
 というように、府下全域と同様な傾向となっている。
 対象地域の人口は、H12からH22の10年間で、約16000人減少し、約25000人が流入している。減少には自然減も含まれているが、かなり多数の人口が流出している。
 これだけ人口の流動化が進めば、部落差別の結果、課題の集中が起きていると言えない。府の報告書は、遠慮がちに、「必ずもすべてが部落差別の結果と捉えることはできない」と言っているが。

「同和」という名称を使用しない理由

 2016年大阪府民文化部人権局は「旧同和対策事業対象地域の課題について」を発表した。橋下知事、松井知事は「同和地区」という名称は極力使わないと言い、府民文化部も「同和地区」という用語を使用していない。略称として「対象地域」という用語を使用しているが。
 「同和」という名称を用いない理由に関しては旧総務省作成の「同和行政史」35Pに、『1982年(昭和57年)、「同和対策事業特別措置法」の期限切れを迎えて、「地域改善対策法」が成立した。(全会一致)。「同和」という名称を用いなかった理由は、同和対策審議会の意見具申で、同和対策事業に国民の批判的意見にあること、広く国民の理解を得るという立場から立案するよう提言されたことから、一般になじまれる名称ということで地域改善とした。』とある。
 歴史的経過を踏まえても「同和」「同和地区」などという名称を極力使用しないようにするというのは当然のことである。

激減する泉南市の教育予算

 2016年泉南市議会3月議会で共産党の松本かよ子議員が、「激減する教育予算で子どもたちは不幸です」と市長を追求。
この原因の一つは、国の教育振興計画によって交付されている金を、市長が市の借金返済に流用していることにある。
教材備品費の減額は異常である。
小学校児童一人あたりの金額  3906円(20年前)→572円(現在)
中学校生徒一人あたりの金額  3628円(20年前)→615円(現在)
これでは、顕微鏡はぼろのまま、体操用マットもぼろのまま・・
これに対して自民党の某議員が「それなら、議員定数を減らして、ういた金で顕微鏡を買ったらよい。」
と発言していたが、問題のすり替えだね。
市長が行っている借金返済のための教育費の流用を止めさせれば、問題は解決するのだから。

平山ひとみ議員懲罰動議を断罪する

那珂川町町会議員(高原、羽良、早富、江頭)らによる発言撤回要求、懲罰動議を断罪する

 2015年6月17日に、町長並びに四議員から平山議員に対して、許し難い動議が出された。理由として、6月定例議会における平山議員質問が差別発言だとしているが、民主主義に反する暴挙である。以下の理由による。
1,解放令の説明で「えた、ひにん」の用語を使用したことが差別発言とされている。どの中学校歴史教科書にも載せられている「えた、ひにん」の用語を使用して議会質問をするのは当然である。これを賤称語と言って使用を禁止するというのであれば、まず文科省に抗議すべきである。そして、中学校歴史教育における「えた、ひにん」の用語を中止させるべきである。
2,同和対策事業は国が13年前に終了させている。大阪府においては、国の方針通り府下のどの自治体も個人給付などを行っている自治体は存在していない。国の指導に反して個人給付を行うことは違法である。違法行為をいまだに行っている自治体名を明らかにするのは議員として当然の行為である。違法自体名をあげることを差別発言とするのは、自治体の違法行政を容認することである。
3,「同和がとても強い糟屋町」とか、また全体的に「同和」という用語を使うことが差別発言とされている。行政用語である「同和」を使用して議会質問を行うことは当然のことである。使用するなと言うのであれば、那珂川町の公文書から「同和」の文言をなくすべきである。


 

育鵬社版中学校歴史教科書「部落問題記述の問題性」

2015年採択の中学校歴史教科書の「部落問題記述の問題性」に関して比較検討を行った。結果を先に言えば、最悪なのが、育鵬社自由社版教科書、良いのが学び舎版教科書である。
 室町文化に関して、庭園づくり等に関しての取り上げ方で、問題性があるのが、教出、帝国、東書、日文の各教科書である。「けがれ」概念を持ちだし、河原者=けがれた者、けがれた者が庭づくりを行った、という説明である。中学生に「けがれ」概念が理解できるのか。文科省は、中学生が「けがれ」概念を理解できると考えているようだ。お粗末な検定。
 この点で言えば、育鵬社は側注であっさりとふれる程度、自由社記述なし、清水記述なし、などが良い。学び舎はコラムでのなかで、「庭つくりに当たったのは、河原者とよばれた低い身分の人たちであった。」と説明しているが、まあこの程度が許容できる範囲か。
 身分制にかかわって、教科書検定のお粗末さが実感できるのが、身分制の人口割合のグラフである。どの教科書も関山直太郎「近世日本の人口構造」が出典と書いている。町人の割合であるが、清水、育鵬、東書、自由、が約5%と、学び舎、日文、帝国、が約6%となっている。出典が同じで異なるデータが載せられている。
 身分による社会というのは、それぞれの身分には、生業と役があったという理解が不可欠である。
 この点的確名説明がなされているのが学び舎で、117P「・・・村に住む百姓身分の人で、田畑を耕作するなどして、年貢を納めることが役でした。・・」とあるように生業が田畑の耕作、役が年貢というような的確な説明が必要である。
 育鵬社版は、123P「百姓・町人とは別に、えた・ひにんとよばれる身分もありました。これらの人々は農業のほかに、死んだ牛馬の処理や、皮革製品を作ったり、役目として罪人の世話などを担当し・・・」というように、えたとひにんを同一しする間違った記述を行い、さらに生業と役を同一する間違った記述を行っている。
 育鵬社自由社版は、「四民平等」というタイトルで、「明治政府は四民平等をかかげ人々を平等な権利と義務をもった国民に・・・」という記述で、解放令を取り上げている。
 そもそも「四民平等」ではなかったのが真実で、学び舎版のように「古い身分の廃止と新しい身分」というタイトルにすべきものである。
 皇族、華族、士族、平民という新しい身分が明治政府によってつくり出され、「えた」「ひにん」などの賤民身分の人々は「平民」とされたというのが真実である。
 血筋や家柄というのが、旧憲法下では存在し、そのことによる差別が存在したのである。
 育鵬社自由社版教科書はともに、戦後の部落問題に関する記述は全くない。
 なお東書は、今回262Pの側注部分で「現在特別措置法にもとづく対策事業は終了しましたが」の部分を削除し、今なお特別対策が続いているがごとき説明にしたのは問題である。各社とも、特別措置法に関する記述を行うのであれば、終了している事実をきちんと記述すべきである。