被差別統一戦線とは

*被差別統一戦線とは

部落解放同盟が第29回大会 (1974年)の運動方針のなかで提唱した戦術で、その後「反差別統一戦線」という名称に改められてた。それによると、現代日本の社会では「部落民」のほかに「在日朝鮮人アイヌ人、沖縄県民をはじめ南西諸島出身者、身障者、農村・産炭地から投げ出された未組織労働者」が、「停滞的・慢性的失業者」群として「一般労働者の低賃金、低生活のしずめとしての役割」を負わされているが、これらの「被差別」未組織労働者の組織化について「どの政党も指導しうる力量をもっていない」ので、この点で 150年を越える歴史と伝統をもち「もっとも先進的な役割りをはたしてきた」部落解放同盟を中心に、その指導のもとに「被差別統一戦線」をつくろうというのであった。しかも部落解放同盟の主張によれば、この「被差別統一戦線」によって、部落解放運動が獲得した成果に対して「ネタミの形をとった差別観念をロコツに示す」これら低辺層の人びとの意識をかえることができると同時に、部落解放同盟にむけられている部落第一主義という批判が「中傷にすぎないことを事実をもって示す」ことになるというものであった。
 これに対し、「被差別統一戦線」論は、「部落民」や在日朝鮮人などを「停滞的・慢性的失業者」として一色にぬりつぶしてとらえるという現実をまったく無視した認識を前提とした暴論であるという批判がおきた。そして、この論は、貧困で無権利な生活を強いられている社会の下積みの人びとに対するおどろくべき蔑視観にとりつかれた発想に基づいたものであった。そして、被差別大衆のなかの一部に残されている排外意識を煽動しながら、「統一戦線」以外の国民を「差別者」とみなすものであり、支配階級の分裂支配に手をかす策動であり、本来の意味での統一戦線とは無畿のものである、というきびしい批判が提起され、今日では忘れ去られたものとなった。