身分〈制〉とは

古代ローマの貴族・騎士・平民・奴隷、中世ヨーロッパの僧侶・貴族・騎士・農奴、インドのカーストのように、奴隷制社会や封建社会の秩序を維持するために人為的・政策的に固定化された社会的地位のことをいう。
わが国の近世の身分制は、豊臣秀吉が、兵農分離・万狩りによって支配階級たる武士と被支配階級たる百姓・町人などとの身分を分離したのにはじまる。江戸時代にはいるとそれぞれの身分のちがいはいっそう厳格なものになった。それぞれの身分内部もさらに細かな身分にわけられ、最下級身分として賤民がおかれた。この封建的身分制のもとでは、社会的地位や職業・財産などは原則として父系親族体系にもとづいて相続・世襲されるから、人びとは生まれながらにして出自と家柄によって社会的身分が決定される。そればかりではなく、居住区域・家屋様式・髪形・服装・職業・言語様式・教育などすべての生活様式や文化にわたっても厳格な身分差別が設けられた。これらの生活様式や文化における身分差別は、日常の社会関係において身分のちがいを目に見える形で表示し識別しうる指標として、身分制の維持のために重要な意味をもっていた。
また身分社会においては、親族体系が地位の相続や世襲に関して重要な意味をもつために、結婚についても異なる身分聞の通婚は一般的に規制された。
明治維新後「四民平等」がとなえられ、江戸時代の身分制は廃止されたが、明治時代の身分制として、皇族・華族・士族・平民として法制的に再編成され、出自や家柄を尊重し、それによって人びとを差別する価値観や慣習も根強く残存することになった。