八尾市「同和問題に関する基本認識等について」の問題点

(1)はじめに
 平成22年12月24日付けで八尾市人権協会理事長(奥田均)が「人権課題に関する提案」なるものをだし、それを受ける形で平成22年12月27日付けで八尾市長名により回答したものである。
 奥田均といえば、著名な部落解放同盟御用学者であり、八尾市長は部落解放同盟の推薦を受けて当選した市長であることから、ツーカーで出されたものと考えられる。これに関連して、「同和地区」とは、云々という内部文書が各部局に提示され八尾市流の特異な考え方が提示されている。
 これらも合わせて、問題点を指摘したい。奥田均の提案部分は略して、八尾市の回答部分だけに問題点を絞りたい。*は回答

(2)同和行政について、部落差別の現実と同和行政
*「ご提案の同和行政についてですが,部落問題を解決するために実施する行政であり,部落差別の現実が現存する限り取り組んでいく必要があると考えています。そのため、部落差別が解消されていない現実を根拠とした取り組みとして,差別の現実と課題に対応する取り組みを推進していく必要があると考えています。」
 平成22年度八尾市資料によれば、同和問題として差別とされているのが、5件である。投書が1件、発言が4件である。
6月8日(投書)本市の地名を記載し,同和が多いのか、と尋ねる内容が書かれていた。
6月20日(発言)「部落地名総監を検索してほしい。」との依頼をした。「転居に際して,住所を知りたかった」との発言があり,部落地名総監の使用意図を把握した。
8月25日(発言)自動販売機破損に関する苦情について,久宝寺緑地管理事務所長と大阪府八尾土木公園緑地課職員が自動販売機設置者と対策について話し合っていた中で,自動販売機設置業者担当より「例えば(地名)や部落では自動販売機が壊されることが多く、苦情の数も多い」との発言があった。
10月18日(発言)・・・「その辺は部落だから,行かない方が良いと言われた。そこは部落ですか?」・・・「部落でガラが悪い怖い所だから止めるように言われた。そのへんはどうなのか?」
23年1月24日(発言)「ちなみに○○町は同和地区に該当しないのですか。」との発言があった。
 八尾市において差別が解消されていない現実として提示されているのは、投書や発言のことである。いわゆる同対審答申で指摘され、特別措置法が制定されて差別の解消課題とされたのは、教育、就職、結婚に関する差別であり、生活実態の改善であった。これらのことは基本的に解決されたとして2002年に法は終了したのである。
 このような中で、この種の投書や発言が八尾市で起きてくるのかと言えば、それは八尾市が市内には「同和地区」はあると言い続けているからである。差別は基本的には解決されて八尾市には「同和地区」はなくなった、と言わずに、まだあると言い続けるからである。「ある」というなら、それはどこだと尋ねるのはあたりまえなのだ。市民に尋ねさせておいて,尋ねたら差別発言だと決めるのだから、いつまでたっても問題は解決しない。「そんなものはない」と言って「ないものは答えられない、2度と尋ねるな」と言えば良いのである。 自動販売機破損に関しての発言であるが、ある程度の実体験が基になった発言であり、不適切な発言であり、適切な注意を行えばすむものである。部落差別だと言って部落解放同盟が,企業と担当に対して確認云々を行ったが、利権獲得手段として発言が利用されたと思われてならない。

(3)部落差別の現実把握の必要性
*「差別の実態把握については,大阪府の調整企画部長通知(H17年11月28日付)に基づき,本市においても実態把握に努めており,今後も,相談事業や差別の現状、旧同和対策事業対象地域における生活実態や意識、並びに市民の意識などを通じて差別の実態把握に努めてまいりたいと考えています。」
 旧同和対策事業対象地域の住民から800名を抽出して意識調査を行った八尾市である。法がなくなっているのにもかかわらず、法的根拠がないのにもかかわらず、○○地区住民を部落差別の対象者扱いするのが当然というのだからあきれるしか言いようがない。意識調査に関しては対象地域とされた住民から抗議の声が寄せられたことは八尾市自身が認識しているはずだ。

(4)同和地区と同和対策事業対象地域
*「同和地区とは,お見込みのとおり、差別の対象とされている被差別部落のことと認識しています。また、同和対策事業対象地域とは、同和対策事業を実施するにあたって線引きされた対象地域のことです。両者の関係については,ご指摘のとおり必ずしも一致するものではありません。地元関係者との協議を踏まえて,同和対策事業を適用する同和対策事業対象地域を設定し、これを同和地区と捉え特別対策として事業を実施してきました。法期限後においても、同和問題に解決のためには,課題がどのように推移しているかを把握検証する必要があり、これまでの特別対策を実施していた地域(旧同和対策事業対象地域)を対象に調査等を行うなど,同和問題の解決に向けて取り組むことが必要であると考えています。」
 八尾市の経過を言えば、特別措置法が出される以前に差別の対象地域としていたのは1地域のみであった。しかし法が出されてから別の某地元関係者から同和対策事業対象地区の指定要求を受け、受け入れた結果、対象地域が2地域となった経過がある。八尾市自体が差別の対象とされていた地域の数を変えてきたのである。そして、線引きを行った結果、対象地域をどんどん拡大していったのが八尾市ではなかったのか。
 法が失効している現在、線引きそのものが消滅しているのである。どこからどこまでがその地域かということ自体がわからなくなっているのにもかかわらず、差別の対象とされている所が、どこからどこまでがわからなくなっているのにもかかわらず、どこどこが被差別部落であり、それが同和地区であるというのは、矛盾もはなはだしい。

(5)同和地区の実態把握と個人情報の保護
*「同和地区の実態把握につきましては、お見込みのとおり、個人情報の保護に関する法令を遵守する限り問題ないと考えます。」
 個人情報の保護さえ、気をつければ、どんな調査も、奥田均がやれと言うなら、やりまっせ、と言うことだ。行政がどこからどこまでの○○地域は同和地区だと決めて、調査をやること自体が問題だという認識がゼロなのだ。なんの法的根拠があるというのだ。

(6)部内資料から
○「同和地区」とは
差別の対象とされている被差別部落を意味するが、そのエリアを確定させることは極めて困難であるとともに、行政が新たに線引きする事はあってはならない。
(問題点)エリアを確定させることは極めて困難とあるが、これは特別法を終了させる理由として、対策事業によって地域環境が改善され他地域と区別できなくなり、どこからどこまでが対象地域であるのか分からなくなったという事をあげているが、そのことと対応する。新たに線引きする事はあってはならない、と言いつつ地区があるというのだから、論理矛盾も甚だしい。○○地区といえば、どこからどこまでがその地区だということがはっきりしなくて、○○はあるというのは、詭弁としか言いようがない。
○「同和対策事業対象地域」とは
同和対策事業対象地域とは、国の財政上の特別措置法に基づく同和対策事業を実施するに際し、実務上の必要性から,便宜上、線引きされた事業対象地域を意味する。平成13年度末をもって、同和対策事業を実施する上での最後の特別措置法である「地対財特法」が失効したことにより、国の財政上の特別措置法に基づく同和対策事業は終了し、同和対策事業を実施する上での対象地域ははなくなった。
(問題点)これでは、本来は差別の対象とされている被差別部落ではないと、八尾市は考えていた○○地域だが、当該地域から要求があったので便宜上○○地域を線引きして対象地域としましたということを、あらためて語っている事になる。これでは、本来の被差別部落でなくても、行政が認定判定したら、被差別部落になったと言っているのに等しい。
○「同和地区」と「同和対策事業対象地域」の関係
同和地区とは,差別の実態を捉えた呼称である一方、同和対策事業対象地域は、実務上の要請により,便宜上線引きされた対象地域であるため,両者は性格が異なり,必ずしも一致するものではない。
(問題点)「同和地区」と「同和対策事業対象地域」は必ずしも一致するものではないということは、つまりは違うということをいいたいわけだ。これでは、「同和対策事業対象地域」は「同和地区」ではないということにもなる。必ずしも一致するものではないのだから。「同和地区」というのは、そもそもいつから八尾市で存在したことになるのだ。法が制定される前から存在したのか、後から存在したのか。
○「旧同和対策事業対象地域」
国の財政上の特別措置としての同和対策事業は終了したため,現在は同和対策事業対象地域は存在しない。このため、特別措置法失効以前の同和対策事業対象地域を指して、「旧同和対策事業対象地域」と呼称するが、「旧同和地域」と呼称することは,差別の実態がなくなったかの誤解が生じるため用いない。
(問題点)八尾市の言う差別の実態とは、投書や発言のことである。投書や発言があるのは、八尾市が「同和地区」はあるあると言い続けるからである。投書や発言がある限り、「旧同和地区」とは言わずにに「同和地区」と言いますと言っているに過ぎない。