部落差別封建遺制論(単純遺制論ともいう)とは

 封建社会から資本主義社会になってからも、今日にいたるまで、部落差別が残っているのは、日本の政治、経済、社会、文化などの領域に前近代的・封建的なものが残存しているためである。したがって資本主義をさらに発展・高度化させ、こうしたおくれた部分を近代化させるならば、部落差別はおのずから解消していくという見解である。
ある時代に作りだされた差別のなかには、次の時代に遺制ないし遺物として残りつづけるものがあり、部落差別も、歴史的には封建社会の身分制に起源をもっ封建的身分差別の残存物である。
しかし、それが残存する理由は、その時代の階級関係から説明されなければならないのに、部落差別封建遺制論は、もっぱら遺制の側からのみ残存の理由を説明する傾向を持っているのが特徴である。