2012年度大阪府学力調査算数問題の愚劣さ・お粗末さについて     

                                   

(1)はじめに
2012年度の大教組教研算数・数学分科会で大阪府学力調査算数問題(6
年)の内容分析が行われた。

http://www.pref.osaka.jp/shochugakko/h24hugakucho-jisshi/index.html

 問題に関しては、上記の大阪府のホームページに載せられているので見るこ
とができる。私なりに分析したもので、調査問題の愚劣な内容、お粗末な内容
を明らかにしておきたい。
 私自身は、すでに退職しているが、在職中は算数教科書原稿の作成、教師用
指導書の作成、児童用問題集の作成にもかかわってきた。その経験からいえ
ば、こんな愚劣で・お粗末な問題を出される児童は悲劇である。またこんな愚
劣で・お粗末な問題の○ツケをさせられる先生は喜劇である。さらに、こんな
愚劣でお粗末な問題の出来不出来に一喜一憂する保護者や教育委員会がいると
すれば、まったくの茶番劇で呆れて開いた口がふさがらないのだ。
 大阪府教委さん、私にまかせていただければ、無料で学力調査に値するよう
な問題をつくってあげますよ。

(2)愚劣さ・お粗末さの極みだらけの問題

 問題自体は上記のホームページを見ていただくとして、愚劣さ・お粗末さか
げんを列記していきたい。

(A問題)

(1)問題趣旨に「加法と減法の混合した計算ができる」とあるが、問題は減
法と加法の混合した計算である。趣旨と異なる問題を出すな。

(2)「小数の計算」とあるが、問題は整数−小数、小数−小数の問題にしな
ければいけません。ねらいはずれの愚問。
(3)「小数の乗法」というねらいなのに、問題は整数×小数、小数×小数の
問題にしなければいけません。これまたねらいはずれの愚問。
(4)「異分母分数の減法」の問題だが、分母が3と9は不適当、分母は6と
8程度にすべき。お粗末。
(5)「分数の除法」の問題だが、問題は分数÷整数、分数÷分数の問題にし
なければいけません。ねらいはずれの愚問。
(6)「四則の混合した計算」の問題であるが、乗除先行ルールの確認なら
−÷より、+×でしょう。ひねくれ問題。
 どの問題も計算問題の名に値しないものばかりなのだ。

(1)公約数を計算して求める問題なのに、4タクの公約数選択問題になって
いる。まともに計算をさせないという愚問なのだ。
(2)小数を分数で表す問題。はじめてまともな問題が出てきた。
(3)四捨五入問題であるが、「およその数にする」という愚劣な問い方から
はじまり、やり方を4タクからの○ツケで答えさせるという愚劣さで終わる問
題。「**の位を四捨五入して・・」とか「上から2桁の・・」とかいう、ま
ともな四捨五入問題を出すべきだ。
(4)小数の加減乗除の意味理解をねらった問題だが、□という変数理解が混
じる不適切問題となっている。□に入る数は、未知数理解からはじめるべきも
のであり、変数からはじめるべきでないのは常識だ。この問題は、まともな小
数の加減乗除の意味理解問題ではないのだ。

 角度測定問題だが、印刷された角度負方向測定用半円分度器を用いることは
論外である。これは現行の教科書の多くが角度負方向測定用半円分度器を載せ
て使用させていることに問題がある。一部のまともな教科書に載せられている
ように角度正方向全円分度器を用いて測定させればよいのだ。この問題は愚問
の極み問題なのだ。

 「三角形の面積における底辺と高さの関係について理解」という趣旨で、パ
ズル問題を出すのだからなにおかいわんやである。この問題は、パズルで頭の
体操問題です。気軽に楽しみましょうとすべき問題なのだ。

 混み具合、1平方メートルあたりの人数で比較する単位あたり量の典型的な
問題である。4タクのなかから適当なものに○を付けさせる。おお、珍しく良
い問題だ。府教委も作ろうと思えば良い問題も作れるのだねえ。

(1)「合同」の意味を問う問題としては、普通の問題。府教委にごく普通の
問題を作る能力ぐらいはありそうだねえ。

(2)右上の直方体の図に、縦、横、高さの長さが書かれていないのは致命的
である。答えの確証の持ちようがない欠陥問題の見本。

 円周率の求め方を4タクから選ぶ問題としては、普通の問題。

 1あたり量のオンパレードから比例の表を考えさせる問題だが、これで「比
例ついて理解している」という問題趣旨ならちゃんちゃらおかしい。4さつで
120という数値だけで4タクから答えを出せるというもの。何のための変化
の表だ。愚問の極み。

 「割合の求め方を理解している」かどうかを確かめるために、円グラフをも
とに、近畿地方全体の面積から大阪府の面積を求めさせるという、円グラフ理
解の二股珍問題。近畿と大阪府を比べる奇妙さと珍妙さを併せ持つ愚問。

(B問題)

(1)カロリーを計算して棒グラフに記入するという、普通の問題。

(2)小学生給食1食分に必要な熱量は何キロカロリー以上なのか問題に明記
せずに問題を考えさせるという欠陥問題。

(3)提示された円グラフに目盛りは書かれておらず、割合の数値データもな
いという欠陥問題。「割合に着目し、複数の円グラフから適切な円グラフを選
ぶこと」をさせたいらしいが、客観性を欠いた4タクあてものだね。


 
(1)「直方体の構成に着目して直方体の辺の長さを求めることができる」と
の趣旨だが、積み木のパズル問題だね。問題が趣旨からずれとる。

(2)「直方体の構成に着目して、複合図形の一部を移動させて直方体を作る
ことができる」ちょの趣旨だが、見取り図から実際の立体とその操作を考えこ
とができるを問う問題で、趣旨違い問題。府教委は趣旨に合わせた問題を作る
能力がないようだねえ。

(3)「直方体の辺の長さに着目して、立方体を構成することができる」との
趣旨だが、実際は公倍数の応用問題なのだ。趣旨違い問題。

(1)「10年ごとに減った人数はどうなっていますか」と問うべき問題を、
「10年ごとの減り方は、どのように変化していますか」と問うて、児童を混
乱させるのが真のねらいだね。欠陥問題。

(2)提示された1目盛り1万人の棒グラフからは、確かな数値を読み取るこ
とが困難である欠陥問題。

(3)「理由を言葉や式を使ってかきましょう」とあるが、棒グラフから確か
な数値を読み取ることができないのに、確かな式の書きようがない。欠陥問
題。

(1)値引き後の値段を求めるという割合の問題を、300×0,8 以外の
式をわざわざ考えさせるという珍問。ひねくれ問題というべきか。

(2)「割合」の理解度を問うレベルの問題ではない。300×0,8 と3
0×9 の比較問題に過ぎない。お粗末問題。

(3)問題にある10本セット販売の意味をはき違えさせるような25本では
という珍問。珍問というよりはやっぱり愚問だね。ひねくれ、こねくれ愚問の
見本だね。

(1)平行四辺形の対辺の長さは等しい、三角形の2辺の和は1辺より長い、
を考える問題。頭の体操問題だね。

(2)ばらの混み具合(本数、面積)を出しているのに使う必要性のない問
題。単に図形が4倍になっているのに目を付ければよいだけという問題。羊頭
を掲げて狗肉を売るような問題だ。

(3)平行線を利用して(う)の平行四辺形の面積を考えさせるという問題な
のだが、「言葉や式を使ってかきましょう」の「言葉を使って」書くのは、何
をどの程度書いて良いのかが明確でなく、愚問である。