同和問題解決に結びつく町づくりとは

(1)はじめに
 特別措置法が終了して10年、今年は府下各地の町づくりにかかわる見学をしてきた。各地の中には地区指定を拒否した地域も含まれる。町づくりにかかわって以下の3地域に分類されることが、あらためて確認された次第である。 見学の視点は、同和対策事業によって環境改善がきちんとなされたどうかという視点である。周辺地域と比較して、見た目がどうかという素朴な視点が必要である。同和対策事業が実施される以前は、見ただけで違和感を感じた地域があった。実際に住んでみなければ分からないこともあるだろうが、見た目ではなんら分からなくなっていれば問題は解決しているといえるのであり、見ただけで分かる状態であれば、問題は解決していないと言えるのである。
 典型的な地区をいくつか取り上げて町づくりを検討したい。

(2)説明されても、目をさらのようにして見ても違いが分からない地域
 F地区は、戦前水平社運動がなされた地域である。戦後、同和対策事業が始まる前にも、始まってからも、運動団体がオルグ活動をおこなったが、どの団体の運動も入り込めず、同和対策事業自体を拒否した地域である。特別対策を必要としなかった生活レベルにあった地域とも言える。解放同盟、同和会等に入って金儲けをしようという人物がいなかったともいえる。
 今回、40年前から地域を知るA氏の案内で見学を行ったが、参加した誰もが説明を受けても、意識して目をさらのようにして見ても、周辺地域との違いが全く分からなかったという感想だった。説明されても周辺地域と全く違いが分からないということは、町づくりの重要な観点である。違いが分からない住環境、生活環境に住むということは、住民の生活意識も周辺地域となんら違わないということを意味している。

(3)見た目では分からないが、説明されたら分かる地域
 同和対策事業は、道路、ガス、下水、住宅など住環境、生活環境の整備を行った。その際に、計画的な町づくりがなされたかということが重要な観点である。特別法が終了して10年、現在の町の様子を見ただけで計画的な町づくりがなされたかどうかは、外から見ただけでも分かるのである。
 I地区は、ほとんど団地で、一般住宅はほとんどないという地区である。団地は建て替え、保全等がされている。道路も碁盤目に走り、こぎれいなニュータウンといった風情である。こういった状況はI地区だけに限らず大阪市内、衛星都市のいくつかの地域で共通に見られた。計画的な町づくりがされて、地域がニュータウンのような状況になり、団地、公園、道路も保全もされている。
 C地区は、旧村のまわりに団地が広がる。旧村内も道路等は整備されている。団地も整備され手入されている。一応計画的な町づくりがされているのが分かる。このような地域がいくつも見られた。
 D地区は、周辺に団地はあるが、C地区と旧村の状況が異なる。旧村には豪邸が建ち並び道は狭い。周辺地域も旧村で大きな家が建ち並ぶところは道が狭いのは共通している。小さな家なら立ち退かせることも可能だったが大きな家では不可能だったのだろう。
 I地区、C地区、D地区等は、説明されて、意識をして見ると周辺地域との違いが分かる。○○会館、○○センター、○○グランド、運動団体の看板用看板、運動団体の事務所などを説明されて、よく見れば周辺地域との違いが分かるのである。
 地区によっては、○○会館、○○センター、○○グランドなどの諸施設が巨大でシンボルタワー的なものとなっていて、さらに名称も人権なんとかというもので、簡単に分かる地区もある。しかし施設自体が巨大でなく、目立たない施設で名称も普通のものであれば、分からない地区も多い。
 つまりは、大阪市のように巨大で不必要な地域にだけにある○○会館、○○センターなどをなくしていけば、説明されても分からないということになる。
 新しいと場のある地域もあるが、これも説明されて分かるというのが実情だ。地域産業として経営的に成り立たなくなっている状況から考えると、移転すれば、説明されても分からない地域となるだろう。

(4)説明されなくても、よく見れば分かる地区
 計画的な町づくりがされずに、周辺との違和感が見られる地域もある。いずれも団地の老朽化が著しく、建て替え、補修などがきちんとされてこなかった地域である。
 例えば、K地区であるが、旧村部分はなく都市化していた町であるのにもかかわらず、道路等がいまだ十分整備されていない。団地も無計画に建てられたのが分かる。しかも老朽化、汚れもめだつ。放置車両等も見られる。周辺地域との違和感が目立つのである。行政が無計画な同和対策事業を進めた結果でもあるし、解放同盟関係企業が地域を無計画に食い物にした結果だとも言える地域である。巨大なシンボルタワー的な諸施設はあるが、他地域との交流に役立っていない施設であるのも特徴である。
 もう一度、同和対策事業をやり直さなければだめだとさせ思わざるを得ない地域である。

(5)それぞれの地域の実情に応じた環境改善
 地域によれば、環境改善の必要がないところもある。しかしながら、ここがその地域だと分かるような超デラックスなシンボルタワー的な施設の見直しが必要な地域も多い。名称も「人権・・」というようなものはやめることが必要だ。古くなった団地は適正規模にする必要がある。団地の中にある店舗だが、営業が成り立っている地域は少ない。多くは営業が成り立たず空き店舗となっている。これも整理する必要がある。
 とりわけ、周辺地域から見ると、違和感を感じる地域は早急に環境改善が必要である。住宅の建て替え、改修などはすぐやるべき課題である。

(6)町づくりの障害となるもの
 それは、行政による、「同和を暴いて意識させる」同和に特化した人権意識調査、人権啓発、教育啓発である。とりわけ意識させずとも「よく見れば分かる地域」もいまだあるが、多くは意識したら分かるという地域である。意識しなければ分からないという実態ならば、「わざわざ意識しさせる必要はないのだ」行政が、わざわざ市民が意識するような調査、啓発を行って意識させているのだ。行政が市民の中に「差別意識」があるので、ということを言うが、そいれは行政が調査・啓発で市民の中に行政の言う「差別意識」を持ち込んでいるに他ならない。