2012年実施「泉南市くらしやすいまちづくりに関するアンケート調査」問題点

 (部落差別を解決させないとんでもアンケート)

(1)はじめに

 「くらしやすいまちづくり」、というタイトルで読み始めると、内容が同和問題アンケートであることは、誰にでも分かる。泉南市の人権施策(同和施策)に活用するためのアンケートであることは明白である。アンケート項目から、泉南市がどんな人権啓発(同和啓発)を行おうとしているかも読み取れる。逐次、質問項目の検討を行う。


(2)とんでもアンケートの内容から

*「さまざまな人権問題に関するあなたの考え方についてお聞きします。」
とあり、
問1 あなたは、次の(1)〜(13)の行為や意見について、どのように思いますか。・・・
 とあり、そう思う、どちらかといえばそう思う、どちらかといえばそう思わない、そう思わない、の4つのどれかに○をつけさせている。
 「例(1)が、ホテルや旅館がハンセン病回復者などの宿泊を断ることは問題だ」であるのに対し「例(9)が、子どもが3歳くらいまでは母親の手で育てるべきだ」
 であるが、そもそも行為と意見を同列に扱うこと自体が不適切である。子どもが3歳まで・・という項目であるが、そもそも3歳以外の意見は無視されているわけで、不適切な質問である。
 さらに、質問項目の尋ね方に問題がある。「例(1)が、・・問題だ」「例(2)結婚する際に。興信所や探偵業者などを使って相手の身元調査を行うことは問題ない」というように、「問題だ」「問題はない」を並べて尋ねている。テストで言えば引っかけ問題であり、ひっかけ質問である。回答者の意図を間違わせるのがねらいの質問である。
 「例(13)が、景気の悪化などを理由に、外国人労働者を解雇することは問題ない」であるが、景気の悪化などが理由でなければ、問題があるのか、問題でないのかは不明瞭であり、不適切な問である。

*「差別や人権尊重の関するあなたの意識や考え方をお聞きします。」
とあり
問2 一般的に「人権問題」や「差別」というものについて、あなたはどのようなお考えをお持ちですか。・・・
 とあり、そう思う、どちらかといえばそう思う、どちらかといえばそう思わない、そう思わない、の4つのどれかに○をつけさせている。
 そもそも、一般的な考えとしてあげられている項目が恣意的、かつ意図的なものである。
 例えば、
 「例(5)差別は法律で禁止する必要がある」であるが、差別といっても種々様々であり、ひとくくりにして問うこと自体が無茶である。個別・具体に問わなければ意味がない。
 「例(8)差別や同和問題があることを口に出さないで、そっとしておけばよい(自然に差別はなくなる)」であるが、一般的な差別と、個別な同和問題を並べて問うこと自体が問題だ。
 以下、このアンケートに、同和問題、同和地区、同和地区出身者の用語が出てくるが、説明はない。大阪府大阪市など他市の同様なアンケートにはそれなりの説明、注があるのに、泉南市は意図的に省いている。意図的に説明、注を加えないのは、啓発の必要性がないほど市民が十二分に理解していると考えているからなのか、または市民に誤解を与えるのが狙いなのか、どちらかである。
 「例(12)学校では、権利より、義務を果たすことを教えるべきだ」であるが、極論を出して2者択一させている。そもそも学校では、権利も義務も同じく教えられている。
 いちいちあげないが、他の質問も同様である。

問3 結婚相手を考える際に、どのような条件を重視しますか(しましたか)・・お子さんがいらっしゃらない方も、・・・(該当蘭にそれぞれ番号を3つまで記入)とあり、あなた自身の場合、お子さんの相手が女性の場合、男性の場合と分けて記入させている。
 選択項目は、1職業 2性格・・・と計15項目から選択させている。自分の場合はともかく、子どもがない人にまで、仮定をさせて答えさせている。現実、実態とかけ離れた問をだし、でてきた回答は仮定の話にしかならないのである。

問4 問3で選んだ条件を満たしているお子さんの結婚相手が、次のような人であった場合、あなたはどのような態度をとると思いますか。
 と尋ねて、例として(1)同和地区出身者・・・とある。
 お子さんのという仮定の条件で、さらには問3の選択肢に、(3)家庭環境があり、家庭環境の中に同和地区出身者というのが含まれるのにもかかわらず、あえて尋ねている。結婚の条件が満たされていれば結婚するのであり、条件が満たされていないから結婚しないのである。結婚の条件が満たされているのに、同和問題を理由に忌避された事例があれば実例を出すべきである。

問5 あなたは、家を購入したり、マンションを借りたりするなど、住宅を選ぶ際に、価格や立地条件などが希望にあっていても、次のような条件の物件の場合、避けることがあると思いますか。・・・
 と尋ねて、例として(1)同和地区の地域内である・・・とある。
 物件を選ぶ際に、価格や立地条件が希望にあっておれば、売買がされ、希望にあっていなければ、売買がなされないのである。立地条件の中にすべての物件が含まれるのである。この質問も、「同和地区」内の物件の忌避意識を誘発せんがためのものであり、土地差別を作り出すのが目的である。
 価格と立地条件が希望にあっているのに、忌避された事例があれば実例を出すべきである。

*人権侵害を受けた経験についてお聞きします。
とあり、

問6 あなたは、過去5年間に自分の人権を侵害されたと感じたことがありますか。・・・
 とまず尋ね、事例、対応例、解決したかどうかを尋ねている。
 「人権を侵害されたこと」ではなくて、「感じた」ことである。
 人権侵害は感じる感じないの問題ではない。とんでもない質問である。

*全員にお聞きします。
 同和問題や人権に関する学習に関して聞きます。
とあり、

問7 あなたは、小学校から高校の間に、同和問題(部落差別)に関する教育を受けたことがありますか。(○は1つ)
 と尋ね、以下程度、内容を尋ねている。
 府の同様な調査結果でも、役立たないばかりでなく、有害だったという結果が出ている項目である。
 同和問題の意識化が狙いの質問であり、解決のための質問ではない。

問8 あなたは、小・中・高校以外の場で、人権問題についての学習を経験したことがありますか。(○はいくつでも)
 と尋ね、以下程度、内容、分野、形式を尋ねている。
 同和問題優先で、その次に他の人権問題が続くというものである。本末転倒の問い方である。

*全員にお聞きします。
 あなたが自分自身のことをどう思っているかについてお聞きします。
とあり、

問9 あなたが、自分自身をどう思っているかを、ありのままお答えください。・・・
 と尋ね、例として(1)現在、自分の生活は充実している・・・とある。
 人権問題の解決を、個人の自己肯定感、個人の意識、個人の気の持ち方などに求める意図がこめられた質問である。

問10 あなたご自身と社会との関係について、次の(1)〜(5)のすべてのことがらに関して、感じたことをありのままにお答えください。(それぞれ1つに○)
 と尋ね、例として(1)自分には、どんな時にでも自分を受け入れ、認めてくれる人がいる。・・・とある。
 人権問題の解決を、社会との関係と言ってはいるが、質問内容は個人と個人とのつながり、個人関係に求めている。

*ここからは、主に同和問題についてお聞きします。
とあり、
問11 あなたが日本の社会において、同和問題や部落問題などと呼ばれている差別の問題があることをはじめて知ったのは、どういうことがきっかけですか。(○は1つ)
 と尋ね、1.父母や家族から聞いた・・・  とある。
 問11は、次の問12につなげるためのものである。

問12 あなたは、同和地区や同和地区の人に対する差別意識が、いまでも残っていると思いますか。あなたのお考えに近いものを選んでください。(○はいずれか1つ)
 と尋ね、1.差別意識はさらに強くなっている・・・とある。
 この問の狙いは、1が強くなっている。2が残っている。3がまだ残っている。4が残っていない。5がわからない。ということから、1から3までを合計し、その数値と4の数値を比較して、いまでも残っているという結論を引き出すための誘導質問である。
 決まった結論を引き出すための質問である。市民が思っていること、考えていることと、部落差別という個々の事実があるということを混同させ、思うから、考えているから事実があるというように結びつけていくのが、この質問の狙いである。

問13 同和地区について次のような意見がありますが、あまたは、どのようにお考えですか。次の(1)〜(7)のことがらについて、すべてお答えください。(○は1つ)
 と尋ね、例として(1)地区外の人に対して、閉鎖的な意識を持った人が多い。 そう思う、どちらかといえばそう思う、どちらともいえない、どちらかといえばそう思わない、そう思わない、の5択から選ばせている。
 あと、こういう質問が(7)まで続いている。
 いずれも、それぞれの意見の根拠、理由、説明がなされず、○をつけさせている。具体例をあげずに、そう思うかと尋ねるのは、偏見を助長することにほかならない。

問14 現在、同和地区の人たちは、就職するときに不利になることがあると思いますか。(○は1つ)
 と尋ね、問14−1で それは近い将来、なくすことができると思いますか。(○は1つ)と尋ねている。
 就職差別の件数と、具体例をあげずにそう思うかと尋ねるのは、偏見を助長することにほかならない。

問15 現在、同和地区の人たちは、結婚する際に反対されることがあると思いますか。(○は1つ)
と尋ね、問15−1で それは近い将来、なくすことができると思いますか。(○は1つ)と尋ねている。
 結婚差別の件数と、具体例をあげずにそう思うかと尋ねるのは、偏見を助長することにほかならない。

問16 あなたは、これまでに、同和地区に対する差別的な発言や行動を直接見聞きされたことがありますか。(○は主なもの1つ)
 と尋ね、例として1.同和地区の人(子ども)とは、つきあっては(遊んでは)いけない・・・をあげている。
さらに、問16−1で、それは(誰から)見聞きしましたか。問16−2で、その話を聞いたとき、どう感じましたか。と尋ねている。
 問16の例で 3,同和地区の人はこわい 4,同和地区の人は無理難題を言う 5,同和対策は不公平 というのをあげているが、例としては、不適当である。
 かつて、稻留市政の時、部落解放同盟が窓口一本化を要求して、泉南市役所を占拠して、市役所業務を妨害したが、その記憶は市民に深く刻まれている。部落解放同盟はこわい、無理難題を言うという記憶は市民から消せないのである。同和更正貸付資金問題をめぐって向井市長が今年処分されたことからも、同和対策は不公平だったことも市民周知の事実である。これらの事実に関する発言や行政の公平さを求める行動を差別的なものとしているのは、とんでもないことだ。

問17 あなたは、同和地区出身の友人や知人がいますか。(○は1つ)
 と尋ね、なんと 4.家族・親族がいる  まで聞いているのである。

 友人、知人と付き合うのに、同和地区出身者かどうかを意識してつきあうのを当然視しているのだ。さらに、家族・親族に同和地区出身者がいるかどうかも尋ねている。つまりは、回答者は同和地区出身者かどうかも尋ねている。
 そもそも友人、知人、家族、親族とつきあうのに、同和地区出身者かどうかを意識させていて、同和問題が解決するはずがない。同和問題が解決した状態とは、友人、知人、家族、親族とのつきあいで、同和云々を全く意識しない状態のことである。
 同和問題を解決させないというのが狙いの質問である。また、この質問はアンケートとはいえ、あなたは同和地区出身者かどうかを尋ねているのであり、個人のプライバシーに触れるとんでもない質問である。行政が市民にアンケートとはいえ、尋ねるのは差別質問そのものである。

問18 あなたは、同和地区とどの程度関わりがありますか(○はいくつでも)
 と尋ね、例として1.同和地区やその近くに住んでいたことがある。2.同和地区内の施設(人権センターや隣保館など)を利用したことがある。・・・をあげている。
 泉南市には人権センターや隣保館という名称の建物はない。存在しない施設名をあげて、答えさせるのだから質問にならなっていない。
 問17と同様に、そもそも同和地区かどうかを意識して関わること当然視している。そもそも意識せずに関わっていくことが問題解決の方向なのに、意識して関わらせるのだから、同和問題を解決させないというのが狙いの質問である。

*全員にお聞きします。
 人権に関する言葉や施設などについてお聞きします。
とあり、

問19 あなたは、次の人権に関する宣言や条例などについてどの程度ご存じですか。・・・
 と尋ね、例として(1)泉南市部落差別などあらゆる差別の撤廃と人権擁護に関する条例・・・(6)部落差別調査等規制等条例・・・などがあげられている。
 この(1)(6)に関しては、同和問題の解決にならない条例だとの反対運動を押し切って制定されたとんでもない条例である。

問20 人権について推進している次の組織や施設などをご存知ですか。・・・
 と尋ね、・・・(3)人権協会・・・ などがあげられている。
 人権協会は、泉南市同和事業促進協議会、地区協議会が前身であり、部落解放同盟の別働隊として窓口一本化などで地域住民を差別選別する役割を果たした団体であった。人権侵害を行ってきた団体であり例としてあげること自体が間違いである。

*最後に、あなたご自身のことについてお聞きします。これまでお聞きしたことを統計的に分析するために、ご協力をお願いします。
とあり、
 問21 あなたの性別は。・・・・・問27 自由記述蘭 がある。

(3)結論
 このアンケートは、部落問題を解決させないことを目的としてなされた、とんでもないアンケートである。このアンケートをもとにして、人権啓発がなされると、泉南市民の人権が守られないことになる。