泉南市小学校校区再編調整区問題とは

(1)はじめに
 泉南市泉南市教育委員会は、7年前樽井小学校校区を4分割して校区再編を進めようとした。
 その主たる理由は、鳴滝第1小学校、鳴滝第2小学校の児童減少問題であった。もともと鳴滝地区には鳴滝小学校があり規模も適正であったのにもかかわらず、泉南市は旧国道山手に新たに第2小学校を建設し、旧国道を境に校区を分割した。第2小学校は、近辺の小学校は教室にストーブすらない状態の中で、全館(体育館を含めて)暖房完備というデラックス校舎であった。市民から同和がらみの利権建設との批判を浴びる中での学校建設であった。
 もともと、適正規模の学校を無理して分割したためどちらの学校も小規模校となり、7年前には学級の維持すら困難になってきた。そこで泉南市教育委員会は、隣接の樽井小学校の校区を4分割して一部を鳴滝第1小学校、第2小学校に校区に繰り入れることにより問題の解決を図ろうとしたのだった。
 4分割されようとした樽井小学校校区の住民は4分割反対の運動を行った。その際、ある市民が「校区を変更されると家や土地の値段が下がる」との発言を行ったことを、泉南市は差別発言だと決めつけて、4分割反対運動を押さえ込もうとしたのである。結局は、市民を差別者扱いしても運動を押さえ込めず、4分割できなかったのである。校区を変更されると家、土地の売値、買値が上下するのは常識であり、そのことを指摘することは差別発言でもなんでもない。
 泉南市は、「家や土地の値段が下がる」という発言することは差別発言だとして、市役所に「部落差別をさせない・・・」という看板を掲げ今日にいたった。しかし、2012年、市民の批判もあり、安全上の理由にして看板を撤去せざるをえなくなった。
 泉南市は、2012年12月3日締め切りの「泉南市くらしやすいまちづくりに関するアンケート」を実施した。これは、内容が同和問題アンケートであり、「あなたは同和地区出身者ですか」とまで尋ねるというとんでもないアンケートであった。その目的は同和問題の解決ではなく、泉南市民は土地差別を行う市民だと泉南市が決めつけることによって、調整区問題を行政の思惑通りに進めるのが真の目的であった。

(2)基本方針・推進プランの問題点
泉南市広報「広報せんなん2012年12月号」P16〜P17からの抜粋によれば、

『調整区解消に係る基本方針・推進プランが策定されています
調整区は土地差別の結果、生まれたものです
平成23年1月、市長を本部長とする人権政策推進本部において、「調整区解消に係る基本方針」(以下、「基本方針」)を策定しました。そこには「調整区は土地差別の結果、生まれたものである」としており、土地差別の解決にむけて取り組みの強化がうたわれています。』
『調整区が設置された経緯
本市におきましては、平成16年度からの教育問題審議会において、本市の教育における新たな理念の確立と教育課題の解決を図るための審議をしてまいりました。しかし、その実現のための小学校の適正規模化にむけた校区再編の審議にかかわって、一部住民からの反対意見を契機に部落差別事象が生起したため、住民の意見を聞き調整する時間的余裕を失する結果となり、具体案を作成するには至りませんでした。そこで、平成18年度からの新たな教育問題審議会において、校区再編の審議に特化して、審議を続けることになりました。
 平成18年審議会では、学校規模適正化にあたり「可能な限り飛び地や調整区を廃止し、また新たに設置しないものとする」との方向で審議を行ってきましたが、その審議途中で「これ以上校区再編をすすめることにより、再び差別事象を起こさないでほしい」という提起がなされました。また、それぞれの地域には大切にしている伝統的な地域コミュニティーがあり、校区再編について十分な地域住民の合意が得られなかったこともあり、結果として調整区を新たに設置することとなりました。』
『1鳴滝小学校と信達小学校、樽井小学校との調整区
 2樽井小学校と雄信小学校との調整区
 3信達小学校と一丘小学校との調整区』
と、書かれている。
 それぞれの調整区に関しては、調整区が設定された時期も異なれば、その理由も異なるのである。上記の「一部住民からの反対意見を契機に部落差別事象が生起したため、・・」というのも、部落差別事象でもなんでもない。一部住民からの反対意見云々とあるのも誤りで、樽井区あげての反対であった。反対理由は樽井区の校区4分割案というのは住民の意向に反するものであったのに他ならない。
 泉南市の言う「部落差別事象」なるものが、なぜ生まれるのかと言えば、先の意識調査に見られるがごとく、また市役所看板に見られるがごとく、人権啓発にこと寄せて、「市民の中に同和問題を故意に暴き出し、意識させ続ける」のが原因である。また、泉南市行政の怠慢で市営住宅の老朽化放置に見られるがごとく、住環境が劣悪なまま放置されることによって、周辺地域の住環境と比較すれば格差が生じていることも原因である。さらには、過去の同和対策事業の乱脈さ(同和更正資金に見られる未償還金問題などがその典型、出鱈目な融資、貸し付けたまま放置して未回収、誤魔化すために市幹部が立て替え払いまでやるなど)の放置、などなど行政責任につきるのである。
 それを市民の意識の問題にすりかえて、責任を回避、責任を市民に転化しているのである。
 さらに言えば樽井小学校と雄信小学校との調整区問題、信達小学校と一丘小学校との調整区問題は、同和問題と全く何の関係もない問題である。同和問題と同一視して問題の解決を図ろうとすること自体が誤りなのである。
 そして、鳴滝小学校、信達小学校、樽井小学校との調整区問題も、同和問題との関連性があるかどうかも疑わしいのである。鳴滝小学校の校区を考えても、同和対策事業による地区指定が行われていたのは、その小学校校区の一部であった。全域が地区指定されていたわけではなかった。
 同和対策事業が終了して10年がたつ。地区指定がなくなって10年、校区の調整区問題と同和問題を関連付けること自体が、「市民の中に同和問題を故意に暴き出し、意識させ続ける」ことであり、同和問題の解決にもならないのである。
 ところが、「広報せんなん」には、以下のように書かれている。
『計画期間は5年間。その後、調整区を解消します
 平成23年11月には、「基本方針」の理念を実現するための具体的実践に直結する行動計画として「調整区解消に係る人権啓発・人権教育のとりくみの推進プラン」(以下、「推進プラン」)を策定しました。計画期間は平成24年度から平成28年度の5年間で、その後、大規模校・小規模校の是正と共に、議会答申でうたわれた、子どもの最善の利益を中心に据えた、新たな教育コミュニティーとしての単一校区とするため、児童数の動向を見通し、調整区を解消します。
 その間、調整区解消にかかわって二度と土地差別を生起させないよう、市民人権意識調査における結果や、調整区の児童の就学状況をふまえた人権啓発、人権教育を「推進プラン」に基づき推進します。』
『市の姿勢
本市における調整区の存在は、結果として、不自然で調整の困難な事態をもたらすと同時に、校区編成の原則そのものをあいまいにし、学校規模適正化の大きな壁になっています。しかし、その解消にあたっては厳しい現状があります。その背景には、平成18 年の「泉南市民人権意識調査」、平成22 年の「大阪府民意識調査」等で明らかになったように、同和地区ならびに同和地区を含む校区への忌避意識の存在があります。調整区の導入は、校区再編をすすめることで、新たな差別事象が生起し、そのことによる被害を防ぐための結果ではありますが、その考え方は、本市における、同和地区ならびに同和地区を含めた校区への土地差別の現実を前提にしたものであり、土地差別の存在を明確に示したものです。言い換えれば、調整区は、土地差別の結果、生まれたものにほかなりません。土地差別は部落差別の基本構造にかかわる重大な社会問題です。よって「部落差別が現存する限り、同和問題解決のための施策の推進に努める」とした本市の基本姿勢において、調整区は行政の主体的責任において解消されるべきものであると考えます。しかしながら、それに対し、これまで本市の取り組みは十分であったとはいえません。
 平成16 年度からの教育問題審議会の答申には、審議にかかわって生起した差別事象について、「このたびの差別事象の生起は、泉南市における差別意識が特別措置としての同和対策事業実施以前の旧態依然たる状況にとどまっていることを示すものであって、なぜこうした差別が温存されてきたのかについ
て痛切な反省と考察が必要である。」という見解が示されています。
この指摘をふまえ、「差別は許さない」という本市の姿勢を明確に示すと共に、調整区解消、すなわち土地差別の解決にむけ、人権啓発・人権教育を、今後より一層、推進していく所存です。』
 とあるように、土地差別問題と調整区問題を結びつけて解決を図ろうとしているのである。平成22年度の「大阪府民意識調査」において土地差別問題、忌避意識がある云々されている項目も、無理矢理に忌避意識と結びつける質問内容であり批判を浴びた項目であった。「価格と立地条件が合致していても、以下の物件の場合はどうですか」と尋ねる項目であった。「立地条件」のなかに全てがふくまれるのにもかかわらず、わざわざ**の物件はどうですかと尋ねるのである。「価格と立地条件」が合致すれば土地、家屋は売れるのであり、買われるのである。「価格と立地条件」が合致しなければ、売り買いされないのはあたりまえである。「立地条件が悪いのに高く売り買いせよ」「そもそも立地条件など無視して価格を付けよ」と行政が言うのは無茶な話なのである。立地条件の中には、教育環境が含まれるのは当然であり、どのような小学校校区、中学校校区に物件があるのかは重要な立地条件なのである。
 小学校校区、中学校校区の変更は、土地・家屋の価格の変化と結びつくのが当然であり、住民が意識するのは当然のことである。
 また小学校校区、中学校校区というのは、それぞれの地域の歴史、文化、コミュニティと結びついて存在しているのであり、ただ単に土地・家屋の「価格と立地条件」だけの問題ではないのである。
 調整区が生じたのは、それぞれの地域の歴史、文化、コミュニティと結びついて調整区が生じたのであるから、それぞれの地域の問題として地域が自主的に解決するのが望ましいのである。調整区をそのまま存続させるのか、解消させるのかも、それぞれの地域の自主性を尊重すればよいのである。行政は地域の自主性をサポートすることに徹すればよいだけの話である。