大阪府行政データを活用した実態把握の主要データから

(1)はじめに
 2月15に開催された大阪府同和問題解決推進審議会に、旧同和対策事業対象地域のある19市4町を対象とした実態把握データが資料提供された。これは、国勢調査データ(調査時期2011年)をもとにして、府が独自集計したものである。独自集計した府の職員は、非常に優秀であり信頼の置ける職員である。大阪府にこのような優秀な職員がいることに府民として誇らしく思う。
 昨年から今年にかけて、大阪府内、大阪市内の旧同和対策事業対象地域の町づくり調査を行っている。対象地域にならなかった地域の調査を行っている。百聞は一見にしかずというが、実際に見るのが一番よく分かる。
 対象地域とならなかったF市の地域などは、昔の面影すらなく周辺地域と同化して、目を皿にようにしても、どこからどこまでがかつての地域だということが分からない状態であった。皮肉なことだが、同和対策事業が行われなかった地域の方が、一般地域そのものになっていたのである。
 同和対策事業が行われた地域も、目を皿にようにしたら分かる地域から、一目で分かる地域まであるのが実感であった。
 ほぼ100%公営住宅という地域から、公営住宅の多数地、公営住宅の少数地、ごくわずかという地域まで多様であった。豪邸が建ち並ぶ地域、閑静な住宅地、下町風の地域までこれまた多様であった。
 これらの多様な地域をひとまとめにした主要データであるので、多様な地域ごとの実態把握と分析が必要であるが、とりあえず市町全体と対象地域全体との比較から分かることを書くことにする。

(2)主要データから分かること
 特徴的な項目だけを取り上げて分析してみた。
(前回平成17年、今回平成23年)
 対象:19市4町 今回のデータのすべてに1市のデータなし

*総人口
 対象地域 前回   90527人 → 今回   77508人
 市町全体 前回 7132047人 → 今回 6912483人
*世帯総数
 対象地域 前回   44579世帯 → 今回   37847世帯
 市町全体 前回 3050192世帯 → 今回 2978873世帯

 市町全体の減少と比較して対象地域の減少が目立つ。原因としては、公営住宅の空き家率の高さがあげられる。各地域の町つくり調査を行ってあらためて明らかになったのは、公営住宅の空き家の多さであった。政策空き家もあるが、ざっと見たところ公営住宅の半分が空き家ではなかろうか。極端な例ではB地域のC住宅のD棟などは住んでいるのは1軒だけというのまであった。
 ほとんどの地域では住宅入居の一般公募が行われ、地域外からの入居者が多数を占めるという地域もあった。しかし、公営住宅法の改正以降、収入に比例する家賃制度に変わったため、高収入の人は高家賃となり、公営住宅に住むメリットがなくなり転出していったのである。公営住宅の多数地ほど、影響が大きいと考えられる。
 また、同和対策事業によって建てられた公営住宅の中には建て替え期を迎えたものも多く、自治体によっては十分なメンテナンスがなされていないものもある。住宅によっては風呂なしというのもあり、住環境が劣悪なため入居希望者が少ないという実情もある。
*高齢者世帯
対象地域 前回   11723世帯(26,3%)
      今回   12064世帯(32,6%)
 市町全体 前回  724994世帯(23,8%)
      今回  820114世帯(28,6%)
 対象地域の方が、高齢者世帯の比率が市町全体より多いが、これは公営住宅の占める比率が大きいことによる。
 高齢者世帯のうちの単身者世帯、母子家庭世帯、父子家庭世帯のデータも出されているが、同様の傾向が見られるのは当然だろう。
*住民税非課税人口
 前回調査には大阪市のデータがないため、前々回(平成12年調査)と比較する。
 対象地域 前々回   30270世帯(54,6%)
      今回    44251世帯(60,3%)
 市町全体 前々回 1847840世帯(41,4%)
      今回  3021437世帯(43,7%)
 対象地域、市町全体ともに増加している。対象地域の方がより増加しているのは、住宅家賃制度改正によって対象地域にある公営住宅から高額所得者が流出し、残されたのは低額所得者であるということによる。また入居基準により低額所得者が入居しやすい実情から、公営住宅に低額所得者が多く住むという実態をあらわしている。
生活保護受給世帯数
 前回調査には大阪市のデータがないため、前々回(平成12年調査)と比較する。
 対象地域 前々回   5850世帯(13,67%)
      今回    7199世帯(19,82%)
 市町全体 前々回  78620世帯(2,78%)
      今回  180839世帯(5,88%)
 市町全体の生活保護世帯は倍増しているのにたいし、対象地域はそれほどでもいない。しかし5世帯に1世帯が生活保護世帯であることから、市町全体ほどではないが、貧困化が進んでいる。これも、公営住宅に低額所得者が多く住むという実態から当然のことといえる。
*大学・短大進学者数(%は卒業者総数に占める割合)
 対象地域 前回    81人(24,1%)
      今回    64人(29,0%)
  府全体 前回 16257人(42,6%)
      今回 18499人(52,4%)
 府全体の伸び率と比べて対象地域の伸び率は低い。これも対象地域の貧困化が原因だと考えられる。公営住宅入居者に低額所得者、生活保護世帯が多いという実態から当然のこととも言える。
 対象地域を考えると、低額所得者、生活保護世帯が多く住む公営住宅地と高額所得者が多く住む戸建て住宅地というように2分化しており、ひとまとめにして考えることに無理がある。
 公営住宅地問題として、教育問題をとらえるべきであろう。