泉南市くらしやすいまちづくりに関するアンケート調査概要版報告書(泉南市民人権意識調査)H25.3に関して


(1)はじめに

 H25.3発行となっているが、手元に届いたのが6月。報告書も3月にできあがって上記アンケート検討委員会に報告されているのだが。
 いずれ泉南市のホームページに、報告書と概要版と議事録(発言内容は載るが、誰の発言かは伏せられる)に掲載されるとのことだ
 「泉南市くらしやすいまちづくりに関するアンケート調査」を掲げて、「同和問題意識調査」だったというように、まさしく「羊頭を掲げて狗肉を売る」姿が、表題からも伝わってくる。副題に(泉南市民人権意識調査)とあるが)これも羊頭で、(泉南市民同和意識調査)というのが狗肉である。
 人権問題の中の一つが同和問題という観点ではなく、同和問題を人権問題の中心観点としているのが、特徴である。(本文7ページのうち6ページが主として同和問題関係)
 先に結論を言えば、概要版は、「同和地区」があり、「同和地区出身者」が存在し、「差別はまだまだある」ということを泉南市民に教えることが目的としている。そして、「同和地区」ってどこや、「同和地区出身者」って誰や、「差別はまだまだある」って、「なくならへんわなあ」と教える概要版報告書なのである。

(2)回収結果から分かること

 16歳以上の男女3000人を対象にアンケート発送した。調査期間中にはがきによる督促状を1回送付している。にもかかわらず、有効回答数が1190で、有効回答率が39.7%である。「くらしやすいまちづくりに関するアンケート」だと思って中身を読むと「同和アンケート」だというわけで、回答を拒否した市民が多数いたわけだ。市が督促状という強制手段を用いたので4割近い回答があったというべきだろう。
 回答率が高いとか、低いとかいう市のコメントはない。

(3)さまざまな人権問題に関する考え方についてから

 13項目がグラフに表わされている。市がコメントしているのは5,6,9,11,の4項目に関してだけである。次のページからは主として同和問題に関する内容なので、人権意識に関わるのは、このページだけであるのにもかかわらず。
 『「5、親の世話や介護は、女性の役割だ」に対し「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」が90.9%でもっとも高くなっていますが、「9、子どもが3歳くらいまでは母親の手で育てるべきだ」に対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」は78.4%を占めています。』
 とふれて、
『「泉南市男女平等参画推進条例」では、社会のあらゆる分野において、性別および性的志向による差別を受けることなく、個人として能力を発揮できるよう、固定的な役割分担意識にとらわれず、だれもがさまざまな活動に参画できるようにとうたっています。』
 とコメントしている。
 親の世話や介護は、子どもの育児は男女力を合わせて合わせてやりなさい、と泉南市は上から目線で言っているにすぎない。行政が、介護、育児に関してどうサポートしていくかという観点が欠落したコメントである。
 『6、11、保護者や教師が子どもに体罰を加えることを容認する割合が6割前後を占めています。』
 とふれて、
『「泉南市子どもの権利に関する条例」では、子どもたちの声に耳を傾け、思いを受け止め、対話を深め、子どもとおとなが、互いにパートナーとして「子どもにやさしいまち」を実現していくことをうたっています。』
 とコメントしている。
 保護者だろうが、教師だろうが、体罰は禁止されていることをまず言うべきなのだ。そして、泉南市体罰禁止のために何を行ってきたか、何を行おうとしているかをコメントすべきである。

(4)差別や人権尊重に関する意識や考え方についてから
(1,差別に関する基本的な認識)

 15項目の結果がグラフで表されている。
この中で、市が取り上げているのは8の同和問題に関してだけである。
 『差別や同和問題があることを口に出さないで、そっとしておけばよい(自然に差別はなくなる)について、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人は52.3%となっている。』
 とふれて、
『現実に差別はまだあります。同和問題だけでなく、他の人権問題についても、知らず知らずのうちに、誰かを傷つけたり差別に荷担してしまっていることもあるかもしれません。「知らなければ傷つけたり差別したりせずにいられる」というわけではないと思います。本来、人と人とが出会い、関係を深めようとするならば、お互いをよく知ろうとすると思います。相手を傷つけないために、その事実についてきちんと知っておくことが必要だと思います。』
 とコメントしている。
 そもそも「差別や同和問題」という尋ね方自体が、誤解を招く尋ね方なのである。一口に差別と言ってもいろいろあるわけで(例えば人種差別、男女差別・・・・)、この場合「同和問題に関する差別」と受け取る回答者は少なくない。「同和問題に関する差別」と受け取った場合、同和対策事業が終了して11年がたち、「同和問題に関する差別」はもう自然になくっていくと思うのは当然である。泉南市は「同和問題に関する差別」がまだあると断言しています。
 同和対策事業が終了して11年がたち、法的にも「同和地区」「同和地区出身者」がなくなって11年がたつ。泉南市民が回答しているように「同和問題に関する差別」はもう自然になくっていく段階にありますと、コメントすべきである。

(2.結婚相手が状況によりとりうる態度の違い)

 6項目が相手が女性、男性別に結果がグラフで表されている。
 市は、
『女性・男性に共通して、親族に犯罪歴がある人では「考え直すように言う」(女性42.5%、男性45.0%)が最も高く、障がいや病気がある人にも反対する割合が高くなっています。』
 とふれている。
 「同和地区出身者」に対しては、「考え直すように言う」(女性13.2%、男性17.2%)と最低であることには、ふれない。市民の意識が健全な方向に向かっていることが、泉南市は気に入らないのだろう。

(3.住宅を選ぶ際の忌避意識)

 5項目が、大阪府と比較されて結果がグラフで表されている。
 市は、1・2の項目だけを取り上げて
『住宅を選ぶ際の忌避意識(「避けると思う」「どちらかといえば避けると思う」は、「同和地区の地域内」が64.1%で最も高く(大阪府2011年度調査55.0%)、次いで「小学校区が同和地区と同じ区域」49.3%(大阪府2011年度調査42.9%)となっており、本誌の方が大阪府より高くなっています。』
 とふれている。
 すべての項目において、忌避意識が大阪府より高い結果がでていることにはふれないのである。
 大阪府が行ってきた人権啓発より、泉南市が行ってきた人権啓発の方が、より効果がなかったということか。

(5)人権侵害を受けた経験についてから

(1.過去5年間に人権侵害を受けたと感じたことの有無)
(2.人権侵害と感じた内容)

 内容に関しては5項目の結果がグラフで表されている。
 市は、
『人権侵害の内容は「あらぬ噂や悪口による、名誉・信用などの侵害」(45.9%)や「プライバシーの侵害」「職場などで職務制限を通じて行ういじめや嫌がらせ」ともに27.6%)などが高くなっています。』
 とふれている。
 いずれも「感じた」ことである。たとえ人権侵害があったとしても「感じて」いなければ、なかったということになりかねないものである。問い自体の不適切さが改めて明らかにされている結果である。

(3.人権侵害を受けたと感じた時の対応)

 5項目の結果がグラフで表されている。
『人権侵害を受けたと感じた際の対応は、「家族や友人など信頼できる人に相談した」が52.0%で最も高い。公的機関(法務局・府・市町村等の人権相談窓口等)に相談したのは7.1%となっています。』
 と、ふれている。
 公的機関への相談が少ない対応として、右側に相談窓口を列記している。そのトップが、実質的に部落解放同盟である泉南市人権協会である。泉南市民のだれがそんなところに相談をしに行くものか。

(6)同和問題や人権に関する学習についてから

(1.小学校から高校の間での同和問題教育)

 学習経験の有無。学習内容の7項目がグラフ化されている。
『小学校から高校の間での同和問題について学習した経験がある割合は51.3%となっています。学習内容は 、「差別をしてはならないという注意」(64.3%)が最も高くなっています。』
 と、ふれている。
 ふれるべき点は、「部落差別をなくす方法について」が最低で12.1%であることだろう。アンケート結果を見れば、過去の身分制度、結婚差別、就職差別、差別は厳しいと教え、注意しなさいという心がけに終始する教育だったといえる。

(2.小・中・高校以外の場で人権学習)

 学習経験が7項目、学習方法が8項目グラフ化されている。学習方法だが、役に立った(印象に残った)学習方法とある。印象に残った学習方法イコール役に立った学習方法ではないのだ。こういう質問自体が問題質問なのである。
『小・中・高校以外の場で人権学習を受けたことはないが40.5%となっており、市民対象の講座を受けた人は6.9%となっています』
 と、ふれて、右側に、泉南市はコンサートや映画上映、講座などを開催しているから、参加をしてくれと呼びかけている。
 学習方法のトップが同和問題(42,4%)で2位の障がい者の人権問題(11.9%)を大きく引き離していることである。つまり、人権問題といえば同和問題というように同和偏重であったことが明らかにされているのである。

(7)同和地区に対する差別問題についてから

(1,同和問題をはじめて知ったきっかけ)

 8項目がグラフ化されている。
同和問題をはじめて知ったきっかけは、「学校の授業で教わった」が30.4%で最も高く、次いで「父母や家族から聞いた」が23,4%となっている。』
 と、ふれている。
 学校の比重が高く、その内容に問題があるのだから、反省をしなければと泉南市教委は考えるべきだ。

(2.同和地区や同和地区出身者への差別意識

 泉南市大阪府を対比してグラフ化されている。
『「差別意識は薄まりつつあるが、まだ残っている」(55,8%)、「差別意識は現在もあまり変わらずに残っている」(14,3%)「差別意識は」さらに強まっている」(1,0%)を合わせると、71.1%が差別意識は残っていると考えています。』
 と、ふれている。
差別意識は薄まりつつあるが、まだ残っている」(55,8%)というのは、本来「まだ残っているが薄まりつつある」と尋ねるべきことなのだ。問題解決の方向へと進んでいるととらえるべき項目なのである。
 なにがなんでも、泉南市差別意識が残っているとねじ曲げて強調していることを物語っている。

(3.同和地区に対するイメージ)

 7項目がグラフ化されている。
『6.いまでも行政から特別扱いを受け、優遇されている、に対し「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が57.6%で最も多くなっています。』
 と、ふれている。
 多額の同和更正貸付金を未収金にし、はては幹部職員が立て替え払いを行い、市長が処分を受けるなどすれば、泉南市民は泉南市が特別扱いをして優遇していると思うのはあたりまえである。ところが、泉南市は反省するどろか、
『2002(平成14)年3月に、地対財特法が失効したことにより、1969(昭和44)年以来、33年間にわたり実施されてきた特別対策は終了しました。国による特別対策は、差別解消には同和地区の生活環境や経済状況を改善することが重要という考えに基づいて進められ、その結果、同和地区の物的環境で大きな成果が上がり、劣悪な生活条件や経済的な低位が差別を再生産するという状況は改善されてきています。特別対策は終了しましたが、それは同和問題が解決したということではありません。まだまだ差別意識は残っています。』
とコメントしています。
 泉南市は、「法が終了して11年もたつのに、同和行政問題を解決できずにすみません。」と市民に謝罪すべきである。「まだまだ差別意識は残っています」などと、市民に責任を転嫁するのはやめていただきたいものだ。

(4,同和地区出身者に対する差別の現状認識)

 就職差別2項目、結婚差別2項目がグラフ化されている。
『同和地区の人たちが就職するときに不利になること、ある21.5%(しばしば+たまに)、ほとんどない24.8%、完全になくせる+かなりなくせる62,8%、なくすのは難しい37,2%となっています。』
『同和地区の人たちが結婚するときに反対されること、ある41.8%(しばしば+たまに)、ほとんどない9.8%、完全になくせる+かなりなくせる57,4%、なくすのは難しい42,4%となっています。』
 とふれている。
 この件に関してどのように泉南市は考えるのか、どのような認識を持たせようとしているのかコメントがない。
 泉南市は、「就職差別、結婚差別は、まだまだある、なくすのは難しい」と市民に教え込みたいようだ。

(5.同和地区に対する差別的な発言や行動の見聞き)

 見聞きしたときの感想が円グラフ化されている。

『同和地区に対する差別的な発言や行動を「見聞きしたことはない」が32,5%を占めています。見聞きしたときの感想は、「そういう見方もあるのかと思った」(53.8%)が最も高くなっています。』
 とふれている。市のコメントは、
『例えば、友人や知人との日常会話の中で見聞きした場合、非難したり注意するような形ではなく、理解を求めて、「その発言を聞いて傷つく人がいる。」ということを伝えていくことが大切です。』
 である。
 このアンケートの言う、差別的な発言や行動というのがどのような発言や行動を指しているのか不明なので、なんとも言えない。
 ただ、一昔前のように、行政に通報しなさい、解放同盟に通報しなさい、そうしたら糾弾してあげますよ、というようなことを言わなくなっただけでもましである。

(6.同和地区やその住民との関わり)

 8項目がグラフ化されている。
 「同和地区の人との関わりはまったくない」44,7%と最高であることにはふれず、右の囲みで、『「子ども元気広場」「人権フォーラム」では、すべての人が共生のまちを目指して・・・』とコメントしている。
 同和問題は、共生の課題ではそもそもないのである。共生する必要性すらない課題なのである。
 例えば、女性差別の問題における男女共生と言えば、そもそも男と女は性別が異なるのであり、性別の解消は不可能であるから共生していく必然性が生じるのである。こんなことも、分かっていないのだ。

(8)結論

 繰り返すが、同和問題の解決に百害あって一利なしの概要版報告書は、ただちに廃棄すべきである。