旧同和対策事業対象地域の課題について

ー実態把握の結果及び専門委員の意見を踏まえてー
大阪府府民文化部人権局作成資料から考える
             

 H22年国勢調査を活用した第1次報告は平成26年に、第2次報告は平成27年に同和問題解決推進審議会で報告されている。さらに専門委員の意見が加えられて、さらに課題が明らかにされている。
 その中で、キーポイントとなるべき部分を考えていきたい。

(1)対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにできない。

 対象地域(79411人)によっては、ほぼ100%が公営住宅と言うところから、ほぼ100%が一戸建て住宅と言うところまである。一括りにできるわけがないというわけだ。
 具体的には、対象地域を9種類の地域類型に分けている。
1,第1種・第2種低層住居専用地域(一戸建ての地域 207人)
2,第1種・第2種中高層専用地域(団地の地域 20690人))
3,第1種・第2種住居地域(団地と一戸建ての地域 33935人)
4,準住居地域(スーパー、倉庫、住宅の地域 232人)
5,近隣商業地域(住宅地に隣接した商店街 1557人)
6,商業地域(繁華街 7563人)
7,準工業地域(あらゆる種類が混在 12194人)
8,工業地域(商店、店舗も存在する工業地域 1552人)
9,市街化調整区域(1481人)
*教育の課題では
 大学・大学院卒業者比率を比べてみると
近隣商業地域(男21,6% 女9,0%)
商業地域(男22,9% 女8.9%)
第1種・第2種中高層専用地域(男14,2% 女5,6%)
第1種・第2種住居地域(男11,2% 女4,4%) というようなちがいがある。
*雇用の課題では
 非正規雇用比率を比べてみると
市街化調整区域(男14,6% 女47,4%)
工業地域(男15,5% 女48,2%)
第1種・第2種中高層専用地域(男23,5% 女56,2%)
第1種・第2種住居地域(男19,6% 女54,3%) というようなちがいがある。
 いずれにしても、団地がある地域では、教育や雇用に課題が多くあるというわけだ。
*基準該当地区とは何か
 対象地域と非対象地域の課題を比較検討するために、以下の6つの指標をもとに、3つ以上の指標が該当する地域を選び出して基準該当地区とよんで比較している(415453人)。
 ちなみに、対象地域で3つ以上の指標が該当するのは、約39000人である。その約10倍もの地域がいろいろ課題が集中している地域(基準該当地域)というわけだ。
 いろいろな課題の6つの指標とは、
1,高齢者単身世帯比率(65歳以上で一人暮らし)
2、母子世帯比率(母親と20歳未満の子)
3、大学・大学院、短大、高専修了者比率
4、義務教育のみ修了者比率
5、完全失業率
6、非正規労働者比率
 対象地域の平均値をもとに、3以外は平均値をうわまった地域を課題のある地域としている。平均値が普通の生活という意味ではないが、一つの目安になるのは確かである。
*対象地域を6つの指標に当てはめると
指標該当なしの地域 19%
指標1つ該当の地域 21%
指標2つ該当の地域 10,6%
指標3つ該当の地域 11,3%
指標4つ該当の地域 9,7%
指標5つ該当の地域 18,1%
指標6つ該当の地域 10,2%
 という結果になっている。

(2)対象地域と同様の課題の集中が、対象地域以外にも見られる。
 高齢者単身世帯比率が高い、母子世帯比率が高い、高等教育修了者比率が低い、義務教育のみ終了者比率が高い、完全失業率が高い、非正規労働者率が高い、という課題をかかえた地域は、上記指標3つ以上対象地域の平均値を上回っている所だとすると415453人いるという結果になる。
 生活実態面で、約41万人が課題が集中している地域に住んでいるという結果になるわけだ。
 H22年国勢調査によれば、住宅所有形態別世帯構成比を見れば、それはどこかということも明らかになっている。
 対象地域(39333世帯)のうち、40.7%が公営の借家であり、基準該当地域(199009世帯)のうち、45,5%が公営の借家である。
 ちなみに大阪府全域(3823279世帯)のうち、6,3%が公営の借家である。
 公営の借家とは、府営住宅、市営住宅、改良住宅などの公営住宅のことであり、公営住宅が多く整備されている所は、生活実態面で課題が集中しているということだ。

(3)対象地域で見られる課題は、必ずもすべてが部落差別の結果と捉えることはできない。
*対象地域の人口の流動化
 H12年調査 人口95468人
(抽出調査7805人回答、47,1%が出生時から居住と回答)
 H22年調査 人口79411人
   出生時から居住  8,6%
   10年未満の居住32,0%
 ちなみに大阪府全域では、
   出生時から居住  8,8%
   10年未満の居住38,3%
 というように、府下全域と同様な傾向となっている。
 対象地域の人口は、H12からH22の10年間で、約16000人減少し、約25000人が流入している。減少には自然減も含まれているが、かなり多数の人口が流出している。
 これだけ人口の流動化が進めば、部落差別の結果、課題の集中が起きていると言えない。府の報告書は、遠慮がちに、「必ずもすべてが部落差別の結果と捉えることはできない」と言っているが。