セツルメントとは

隣保事業ともよばれる。スラムなど一定の地域に居住する労働者や貧困者の生活と文化の向上をはかることを目的として、教育・経済保護・文化厚生施設・相談活動・調査活動などをいとなむもので、その活動の中心として多くの場合ホールをもち、そこに定住して、地域の人びとと個人的・人格的に結びついて上記の目的を達成しようとする集団的活動。
歴史的には、 1884(明治17)年ロンドンのイーストエンドのスラム街で、大学生らが中心となって創立されたトインピー・ホールが最初とされている。研究者や学生など大学関係者を中心とするものが多かったため、「大学殖民事業」、「大学拡張運動」などともよばれた。
この運動はアメリカ、オランダ、ドイツなど各国に発展し、わが国では、 1891(明治24)年の岡山博愛会、 1897(明治30)年の片山潜によるキングスレー・ホールが初期のものとして有名であり、神戸における賀川豊彦らの実践もその典型である。また公的な隣保事業も、大正期の後半から昭和10年代にかけて、農村部を中心にかなりすすめられ、同和対策事業の一環としても、隣保館などが設置された。