同和対策事業を終了した理由は何ですか?

(回答)続ける限り問題解決しないからです。


同和対策事業はなぜ行われたのでしょうか。
1965年の同和対策審議会答申では「道路お
よび下排水路は一般に未整備で、保健衛生や火
災防止上危険などの点からも改善の余地が十分
にある。また路上の街灯設置についても、設備
された地区はきわめて少ない。上水道設備の普
及は、いぜんとして共同利用、あるいは井戸の
利用という状態がみられる。都市的地区でさえ
も現在、井戸利用がまだ少なくない。」など地
域のようすや衛生状況、雇用、結婚などの実態
が指摘され、地域の環境改善と生活向上のため
の施策が必要とされました。
1969年から始まった同和対策事業は、2
002年の終了までに国・地方自治体合わせて
15兆円を使われ、地域の環境は激変しました。
同時にその事業をめぐって利権あさりと暴力が
横行しました。地域改善対策協議会意見具申が
指摘するように、行政の主体性の欠如、同和関
係者の自立の視点の軽視、えせ同和行為の横行、
同和問題についての自由な意見の潜在化傾向な
ど新しい問題が生じました。

2002年3月末に特別対策は終了しました。
総務省の出した「同和行政史」は、「特別対
策を終了する理由」というページを設け、?地
域の状況が大きく変化した、?特別対策の継続
同和問題の解決に必ずしも有効とは考えられ
ない、?大規模な人口変動で対象を限定した施
策は実務上困難という3点をあげています。
(「同和行政史」総務省大臣官房地域改善対策
室平成14年3月p78・79)

?の「特別対策の継続は同和問題の解決に必
ずしも有効とは考えられない」という意味につ
いて「同和行政史」は大きく2つ説明していま
す。
「施策の適応上、地区や住民を行政が公的に区
別して実施する特別対策の手法が、差別の解消
という同和行政の目的と調和しがたい側面があ
ることも否定できない。」
行政が公的に区別することを続けることは差
別の解消という目的と矛盾するという点です。
「また、特別対策は差別と貧困の悪循環を断ち
切ることを目的として始められたものであるが、
全国の同和地区を全て一律に低位なものとみて
いくことは、同和地区に対するマイナスのイメー
ジの固定化につながりかねず、こうした点から
も特別対策をいつまでも継続していくことは問
題の解決に有効とは考えられない」
特別対策を続けることが、マイナスイメージ
の固定化につながることは大阪府民意識調査の分析
に示されているとおりです。
1969年からの特別対策の開始は研修や資
料で説明されますが、ここに紹介した特別対策
を終了する理由の説明は研修や資料でいっさい
説明がありません。
行政や学校がいつまでもいつまでも「部落」
や「同和地区」として特別扱いする限り、問題
は解決しないのです。